ガセネッタ&シモネッタ (文春文庫)(米原万理/文春文庫)

ガセネッタ&シモネッタ (文春文庫)
日露通訳を生業とする著者が、舞台裏で起きる予想天外なエピソードを交えつつ、言葉についてさらに各国の文化について縦横無尽につづったエッセイ。

通訳者ひとりひとりが、それぞれの言語を母国語とする本国の国民性を、もう驚くほど色濃く染み着かせている。/中国語や朝鮮・韓国語の通訳者の話は、律儀でクソまじめ、ゆめ間違っても冗談などとばしはしない。服装は地味め。フランス語は服装もしゃべる内容もちょっとキザっぽく気取ってる。真面目さを正面から押し出すのを極度に嫌う。(中略)ロシア語の通訳者は物事に動じない肝っ玉の太さを共通して持っているとのこと。

このエッセイから伺える著者の雰囲気はまさにこの通り。なんだか懐が深そうなかんじがするのだ。この本を読むと、普段知ることのない<黒子>の存在である通訳の世界がかいま見えるとともに、改めて日本語のすばらしさを気付かせてくれる。楽しんで読めて、いろいろ興味をかき立てられるエッセイでした。