彼女の部屋(藤野千夜/講談社)

彼女の部屋
古本屋にて購入。6つ物語を収録した短編集。
どれもなかなか良かったが、一番好きなのは「ハローウィーン」。まず何より深く共感したのは主人公・周子の生活だ。周子はファミリータイプのマンションに一人で住む編集者。わかるわー。掃除機かけるヒマがないからホコリだらけなんだよね、冷蔵庫には恐ろしくてもう開けられずに放置してあるタッパーがあるのよね、洗濯物は洗って干すまでで精一杯なんだよね、休みの日は体を休めたいんだよね、うんうん、わかるわー。わたしも今日はあまりの汚さにさすがに掃除機かけたけど、冷蔵庫の掃除までは手が回らなかったわ…。こんな哀しい共感はともかくとして、ラストがなんともいえない切なさ。ちょっと悲しくなってしまった。このほか死んだはずの父が帰ってくる「父の帰宅」、やたら人なつこいが嫌われるタイプの女に無理やり誘われ彼女の部屋に遊びに行く表題作が、おもしろかった。