殴られ屋の女神(池永陽/徳間書店)

殴られ屋の女神
この人の作品は新刊が出るたびに買っているが、「好きか」と問われると「微妙」と答えざるを得ない。ちょっと重くて生々しく感じる部分があるから読後感がいいとは言えない。だけど人間の弱さと優しさがきちんと描かれていて、心に響く。本作もそんな池永陽らしい一作。
恵比寿駅前で「殴られ屋」を営む主人公・須崎康平。会社からも妻からもリストラされ、高校時代ボクシング部で培った打たれ強さを武器にして始めた商売だ。自傷癖のある16歳の男娼・豊のマンションに居候しながら、毎晩駅前に立つ須崎の前には様々なトラブルが持ち込まれる。家庭内暴力体罰、いじめ…幼いころに母親から虐待を受けていた須崎は、親身にアドバイスし時には手を貸す。相談者たち、須崎、そして豊の心の傷は生々しく、そしてとても深い。そんな傷を抱えながら、それでも闘いながら前を向いて行きようとする、優しくも弱い人間たちの物語。

優しい人って今の時代は損だね。優しい人って哀しい人ってことだもんね、時代から取り残されてついて行けないんだもんね。

ふー、やはり読後感は少し重いが、読んで良かったなぁと思った。