Book(8-9)

螢坂
螢坂北森鴻講談社
やたら居心地の良いビアバー<香菜里屋>に常連たちが持ち込む様々な謎を、マスター・工藤がそっと解き明かす連作短編集。人間味あふれるストーリーで読み心地が良い。しかししかし…何よりわたしの心を捕らえて離さないのが<香菜里屋>そのものである。初めての客もまるで常連かのようにくつろぐことができ、度数の違うビールが4種類、そして旬のモノを一風変わった、かつビールに合う味付けで客を堪能させるおつまみの数々…。うぅ…この店の常連になりたい…。「メイン・ディッシュ」を読んだときも思ったが、この著者はかなりの料理通かつ美味しいもん好きだな。


これからはあるくのだ (文春文庫)
これからはあるくのだ (文春文庫)角田光代/文春文庫)
この人のエッセイは初めて読む。予想通りの地味な日常を、彼女らしい文体で描いた一作。文庫化によせたあとがきで著者は3年前とあまりに代わり映えのない自分と生活に驚きがらこう続ける。
「この偉大なる退屈と呼べそうな私の日々は、三年前も今もまったくかたちをかえていない。そのことにあきれつつ、しかし一方で、なんとたのもしいことよ、とも思う。(中略)今の日々が好きだとか、満ち足りてるとか、そういう理由で、かわらないことを望んでいるわけでは決してない。そうじゃなくて、私たちは、外側で起きるどんなできごとも手出しできないくらい頑丈なのだと、きっと信じていたいのだ。」
これを読むと、なんかタイトルがじんとくるのだ。