Book(17-18)

カップルズ (集英社文庫)
カップルズ (集英社文庫)佐藤正午集英社文庫
久しぶりの佐藤正午。古本屋で購入。
一人の中年作家の視点から、町に住む人々に関する様々な「噂」を見つめた連作短編集。
説明するのが難しいけど、面白い作品だった。それぞれの物語の中でまるで探偵かのように登場する割にとくにその真偽を追求しない主人公のスタンスが新鮮で読後感が良い。引き込まれてしまいました。佐藤正午らしいこだわりのある作品だった。



ボランティア・スピリット (光文社文庫)
ボランティア・スピリット (光文社文庫)永井するみ光文社文庫
この人を知ったのは数ヶ月前。「本の雑誌」で北上次郎がオススメしてたので新作『俯いてたつもりはない』を読んだのだ。そのときはすごく引き込まれたんだけどミステリとしてストーリーにちょっと違和感を感じたので、それ以来この人の本は読んでなかった。
そしてこの作品だが…これがすごく良かった!誰の心の中にもある「ずるさ」を描くのがとても上手くて、しかもそのテーマに持ってきたのが<ボランティア>なんだから。本作は市民センターで外国人にほぼ無料で日本語を教えるボランティアの日本人たちと、そのセンターに関わる人々を視点に描かれた連作短編集。主婦仲間への体裁と家庭からの逃避のために嫌々ボランティアを始めた主婦、リストラにあって家に居づらくなった中年男性、若い外国人の男にちやほやされたい女…などの問題を抱えたボランティアたち、そして日本語を学ぶ外国人たちの事情が、それぞれの短編にしっかりと描かれている。
<ボランティア>とは何なのか―なんてことはまったく関係ない。この<日本語センター>はまるで交差点のようである。いろんな人がすれ違い、ときにぶつかる。「善意」が「偽善」に、「偽善」がときに本当の「善意」になる。その間で揺れ動く人間の心を丹念に描いたこの作品はすばらしい。
やっぱこの人の他の作品も読んでみよう!