Book(11-12)

パートタイム・パートナー (光文社文庫)
パートタイム・パートナー (光文社文庫)平安寿子光文社文庫
この人の最近の作品は必ず読んでるんだけど、昔の作品は読んでなかったので文庫で見付けて嬉しい。
「パートタイム・パートナー」とは「デート屋」。セックスは無し、デートにお付き合いしますよ、2時間1万円で。年上の女友達のアドバイスを参考にたった一人でこんな稼業をはじめた優男・新藤晶生の物語。
こういう設定はいくつか読んだことがある。一条ゆかりの『正しい恋愛のススメ』、石田衣良の『娼年』。この二つはセックス込みのデートだったし、システム化された組織で働く男の子の話だったけど。
相手の望むままに、悩みを聞いてあげて、良いところを探して褒めてあげて―女の子に対しては苦もなくそんなことが自然に出来る晶生は「これぞ天職!」と思っているのだが、現実はそうもいかないことも多い。デート相手として次々と登場する女たちが、これまた一筋縄ではいかない。やり方を否定されたり、男に恨みのある女にボコられたり…。それでも決して相手を否定しない晶生の葛藤と成長が読んでいて楽しい。
評判通り、おもしろい作品でした。



終業式 (角川文庫)
終業式 (角川文庫)姫野カオルコ/角川文庫)
seiitiさんのオススメにより購入。
まず面白いのは、この本がすべて「手紙」で構成されてること。高校の授業中にこっそりノートを破って書いた手紙から、大学生・社会人になって旧友や恋人に向けて書いた手紙。主軸となるのは同級生である優子・悦子・宏の三人で、彼らに関わるいろんな人々の手紙が時代を追って載せられている。
一風変わった本だが、これがすこぶる面白い!手紙というのは本心を出しているようで微妙に隠してて、でも見え隠れする気持ちが読者の想像をかき立てる。
思い出すなぁ。中学、高校、そして大学の1〜2回生のころはよく手紙を書いてたから。携帯も自分用のパソコンもなかった時代。ん?大学生の頃は携帯持ってたけど、そんなにメール交換はしてなかった気がする。よく覚えてないけど。最近は中学生も携帯持ってる時代だから、手紙なんてみんな書かないのだろうか。授業中にこっそり手紙を回す、なんてこともないのかなぁ。しっかし今思い返すと、手紙ってかなり恥ずかしい。なんか余計なことを書いてしまう分量が、メールより断然に多いからさ。簡単にDeleteできないし。とくに大学一回生の頃って恥ずかしい手紙が多かった気がする。自分が書いたものも友達が書いたものも。中でも男の子の手紙は本人とギャップがあって、ちっとも現実的ではない手紙を寄こしてきてた記憶があって、この作品の中で宏が書く手紙なんてまさにそんなかんじ!って笑っちゃまじめに書いてた人に悪いけど、笑いそうになるんだよね。
あとがきより―
<あのころ。なんて単純で、なんて、一日一日が新鮮で、なんでもドキドキしていたんだろう。なんて、一年が長かったんだろう。体育祭の優勝がなんて大事なことだったんだろう。夜まで教室に残ってる日がなんて「特別」な日だったんだろう。(中略)テストがなんてこわかったんだろう。先生にあてられるのがなんてイヤだったんだろう。今だってきっとまだ「あのころ」は各人のどこかにしまってあるだろうと。」
はい、しまってあります。それを鮮やかに思い出させてくれたこの作品に感謝。また十年後とかにでも読みたいな。いつまでたっても完全に切れるということはない同級生たちを大事にして。彼らにメールや電話でなく、久しぶりに手紙を書きたいな。