Book(10)

劫尽童女
劫尽童女恩田陸/光文社)
去年後半から恩田陸ははまって、さすがにほぼ読み尽くしてしまっただろう、という勢いで読んだが、こうして古本屋で未読本を見付けると嬉しい限り。この作家はSF、ミステリ(叙述ミステリ含む)、青春モノまでジャンルを超えて上等なレベルの作品を生み出すが、今回の作品はストレートにSF。
ある有能な医学者が生み出した<品種改良>された人間―幼い少女・ハルカ。彼女を狙う組織<ZOO>とハルカを守る組織、そして謎の第三の組織。その能力を狙われ、ときに利用されてしまうハルカの混乱に満ちた人生を描く一作。
物語の最初から最後まで張り巡らせられた緊張感がたまらない。何度も言ってるが、やっぱこの人上手いよね。この作品は5つに分けられているのだが、その中でも二つ目の「化縁」が一番印象に残った。だって学園モノなのである!恩田陸は「学校」に代表されるような限られた世界での物語づくりが抜群に上手いのだ。
新作が今月中に出るらしくそちらも楽しみ。この人はコンスタントに新作を出してくれて、嬉しい限りだ。