Book(5-6)

リピート
リピート乾くるみ文藝春秋
この人の本読むのはじめて。今月の本の雑誌北上次郎がオススメしてたから。
ある日、知らない男から電話がかかってきてこれから起こる地震について詳細に語られる。そしてその言葉通り、本当に地震は起こった。そしてまた電話が鳴り、「信じてくれるなら、一緒に過去に戻らないか―?」と誘われ…。
本格ミステリとSFが混じり合ったような作品。語り口が上手いので、一気に引き込まれる。なかなかおもしろかった。

野ブタ。をプロデュース
野ブタ。をプロデュース白岩玄河出書房新社
第41回文藝賞受賞作品。もう一人の受賞者の山崎ナオコーラも名前からして気になるところだけど…。
人間関係は表面的な部分だけでオッケーと<学校では人気者なオレ>を演じる修二。一方いじめが原因で修二のクラスに編入してきたむさくるしいデブ<野ブタ>こと信太。早速新しい学校でもいじめられているところを助けてくれた修二の行動に感動した信太は「弟子にしてください!」と泣きつく。
<だいたいあいつは俺の弟子になってどうする気だよ。俺みたいになりたいとかなんとか言ってたな。弟子になったらイジメから抜け出せるとでも思ってるのか?その前に俺みたいになりたいってどういうことだ?俺みたいに誰からも敵視されず、愛される存在になりたいってこと?ブタには無理だろ。んー、断るか。面倒くさいこと引き受けて、俺にとばっちり来たらヤだし。やっぱり断るか。売れないブタはいりませんって。ノーモアブタ!って。モアじゃねぇか。でもアイツこのままいったらまた別の学校に移らなきゃいけなくなるだろうし。彷徨う野ブタ……そういう映画ありそう。……売れないブタをなんとか売れるようにするとか?無理か。……いや、……いけるんじゃないの?俺が全部管理して思うように育てていけば。うん。ちょっと人権問題に引っかかりそうだけど。でもブタだし。うん。それに音楽業界とかでもやってんじゃん、プロデュースってやつ。そうだ、プロデュース。それだ。……今現在完全無視の野ブタをみんなが愛する人気者にする。これができりゃ俺の人を騙して動かす力は本物だ。よし。ここはひとつ、挑戦してみるか。>
なんて遊び半分で始めた野ブタのプロデュース。修二の作戦は功を奏して、徐々にクラス内での野ブタの位置が変化していくのだが、一方で修二は―。
この作品はおもしろい!まず人気者の<俺>がデブでキモい<野ブタ>をプロデュースして人気者にしちゃうっていう漫画的な発想がいい。最初はコメディタッチになるのかな(「奇人たちの晩餐」みたく馬鹿にしてるつもりが振り回されて…みたいな)なんて思ってたくらいテンポも良く会話も面白くて読み進めてしまうんだけど、ラスト、意外なところで足下をすくわれた修二の哀しさがじんと胸にくる。(笑)の多用と言葉へのこだわりが薄く感じられることに目をつぶれば、勢いのあるシンプルな文章も好感度高い。なんていったってデビュー作、次回期待してます。