Book(33)
THE WRONG GOODBYE ロング・グッドバイ(矢作俊彦/角川書店)
神奈川県警の二村は酒場で知り合ったビリーが殺人事件に関わったことによって捜査一課を外されてしまう。時を同じくして先輩刑事から知り合いの女性の失踪事件についての調査を依頼されるが…。
国内ミステリとしては外人出現率ナンバーワンでは。まあ横浜っていう土地柄があるにしてもかなりのもんだ。でも外人が多いから翻訳っぽいとかいうわけではない。文体全体が<ホンヤクモノ>の雰囲気を漂わせている。読んでもらはないとわかりづらいかも知れんけど。でも「ダイキリ・ダブル」を「パパ・ドーブレ」って注文しちゃうビリーや、それを理解しちゃう老バーテンダーなんて、ちょっと時空を超えた感じが漂う。個人的には大好きだけどさ。
<半死半生の町並みに、青いタイル張りの石釜を見つけた。私はその店で生ビールを飲み、ピザを食べた。酒場ではなかったが、明るさも椅子の固さも適当だった。>
ね?こんな感じです。帯には「日本語で書かれた、最も美しいハードボイルド探偵小説」。間違ってないんだけどね。チャンドラーを最高峰とするなら、この小説の価値も高いだろうけど。ただ普通のミステリとかハードボイルドとして読むとしたら、ちょっとスピード感と現実味が足りない気がする。チャンドラー要素(とかホンヤクモノ要素)をここまで融合させるのはすごいと思うが、一つのミステリとして読むと微妙かも。
この作者を知ったのは前作―
ららら科學の子(矢作俊彦/文芸春秋)
これはほんっとうにおもしろかった!殺人未遂に問われ中国に逃げた男が30年ぶりに東京へ戻ってきた―そんな場面から始まるこの物語は、ノスタルジック漂わせる昔の東京と現代の東京を織り交ぜながら進む巧みなストーリー展開で一気に読ませてしまう、ただならぬ小説だったのだ。一気読み間違いなしで、もちろんテーマソングは鉄腕アトム!!(読んだ後も頭から離れない…)
まだ二作しか読んでないからわかんないけど、ちょっと懐古主義な作家さんなのかな。でもかなり上手いのは明らかだし、これからも過去の作品も読んでいきたい。