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ウランバーナの森 (講談社文庫)
ウランバーナの森 (講談社文庫)奥田英朗講談社文庫)
この人の本は全部読んだと勝手に思ってた。これがデビュー作らしい。直木賞おめでとうってことでわざわざ平台に並べてあったので買ってみた。
<つまり、わたしは、フィクションで彼の伝記の空白部分を埋めてみたかったのだ。」>―文庫版へのあとがきより
彼とはジョン・レノンであり、伝記の空白部分とは妻や幼い息子とともに過ごした軽井沢の夏である。文中でもあとがきでも主人公のジョンがジョン・レノンであるとは明言されてないが、誰でもわかるくらいに彼のエピソードが盛り込まれている。つまりは現実の設定をもとにしたフィクションということか。
まあそれはどうでもいいのだが、これを読んで思うのは「この作家は器用だなあ」ってことだ。正直、この作品はあんまりおもしろくない。本質的なテーマは変わってないのだが、ここ数年の著作に比べると雲泥の差がある。この作品が刊行されたのが7年前。この7年間で小説の魅せ方を器用に取り入れて上手くなっているのだなあと思うのだ。でもその「器用さ」にすべての作品が収まっているゆえに、ガツンと来るようなものがないなあとも思う。