光

ひさしぶりの三浦しをんです。

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島民誰もが知り合いで集落は二つしかない小さな離島、美浜島から物語は始まる。ある夜、近海で起きた大地震の影響で起きた大津波によって美浜島は壊滅状態に。難を逃れたのは中学生の伸之と美花、小学生の輔、輔の父親、灯台守のじいさん、民宿の客の山中の6人。そして救援活動中、山中は行方不明となる。それから十数年後、彼らの運命がまた絡み出した…。

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さすがの語り口、面白いは面白いのよ。ほぼ一気に読めました。しかし…

まず、子どものころの罪を抱えたまま大人になった、もと子どもたちの物語ってのが既視感ばりばり。『永遠の仔』とか『白夜行』があるじゃない。しかもこの二作を超える驚きがないんだよなぁ。

登場人物もどこかで見たことのあるようなものばかり。島出身の唯一の少女が素性隠して芸能界で成功してるなんて松本清張の世界みたい。それに伸之の奥さんの南海子についても、専業主婦の孤独やコンプレックスを盛り込んでるんだけど、それももうほんとわかりやすすぎて萎えるのよ。

最大の気になるポイントはやっぱり大津波かなぁ。島全体でたまたま高台にいた6人しか生き残らないってのもだけど、そんだの大津波なら他の島や東京にも被害はあるだろうに、そういう記述はゼロ。ピンポイントで美浜島だけが被害にあったよう。だから津波が物語を盛り上げるためのアイテム化してる気がして、それが不快だったかもしれない。書かれたのは2006年なのでこのツッコミは意地悪かもしれないけど。

というわけでちょっと残念でした。好きだったんだけどなぁ、三浦さん。