シリアの花嫁 [DVD]

シリアの花嫁 [DVD]

BSで放送してたのを録画。
実際に会ったことのない相手とお見合い結婚、しかもその結婚のために国境を越えたら二度と戻ることはできず、愛する家族にも会うことができなくなる……。
こういうふうにあらすじを書くと、すっごくかなしい物語みたいなんだけど、全然そうじゃないんです。寂しさや不安を押し殺して結婚式の準備は淡々と進み（結婚式というよりお別れ会、みたいな。新郎は国境の向こうにいるので）、その間にも活動家の父親はデモに参加して警察と小競り合いを起こしたり、数年前に勘当された長男がロシア人の妻と息子を連れて帰郷したり、姪はボーイフレンドと隠れ会っているのを密告されて父親に外出禁止を言い渡されたり、なんだか全員が居心地悪そうな一日。政治的抑圧から生まれた憎しみ、民族差別や男女差別、そしてジェネレーションギャップなど、それぞれに深刻な問題はさらりと、あくまで日常の一部として描かれています。結婚式という非日常の一日だからこそ、その家族に関わるさまざまな問題を一気に描くことができたんでしょうね。
そんなしがらみから自分の足で立ち上がろうとする姉妹の姿はとても美しいです。そしていろんな思いはあるだろうけど最後にそっと息子の肩を抱いたお父さんの気持ちを想像すると、切なくなりました。
予想してたほどの深刻さはなく、家族万歳！ってかんじの一本でした。