インシテミル(米澤穂信)

インシテミル

インシテミル

前作『ボトルネック』も十分に驚かせてもらったけど、今回もまた………。安易な言葉でまとめちゃうと<新本格>×<殺人ゲーム>×<ライアーゲーム>?………毎回驚かせてもらってます。ちなみに表紙は西島大介ですね?
物語の始まりは、何かの冗談かと思うような超高級報酬の求人広告。ただし仕事内容は「人文科学的な実験の被験」とあるだけで具体的な内容は不明。あるものは冗談半分で、あるものは本気で、その求人に応募する。そして選ばれた12人は人里離れた山奥の建物地下で7日間、「観察」されることになった………。
読みながら何度か「これって米澤穂信の作品だよね?」と誰かに確認したくなった。なんでだろうと改めて考えてみると、こういうかたちでの「非日常」な世界を舞台にした作品って初めてなんだよね。結果的にとんでもない世界にストーリーが進んでいくとしても、これまでの米澤作品ってあくまで「日常」が舞台だった。それがいきなりこんな、いかにも「つくられた非日常」が舞台だったから、戸惑いを覚えたんだと思う。それから「青春小説」要素がほぼなかったことも、ちょっと驚いたかな。
というわけでがっつりミステリしてる作品なので、ミステリ好きな人たちからどう読まれるのかも気になるところ。ちなみに、とくにミステリ好きってわけでもない米澤ファンの一人としては、ますます今後が期待できると確信できる嬉しい一作でした。自分が期待したベクトルと違っても、面白いんだもの。予想を裏切るような作品を出してくれるほど、まだまだ楽しませてくれるだろうという確信が持てて楽しい。
次作は一ヶ月後くらいに「古典部」最新作が出るようですね。二ヶ月連続とはうれしいことです。