文學少女の友(千野帽子)

文學少女の友

文學少女の友

先日読んだ『文壇ガーリッシュ』がなかなか面白かったので、続けて購入してみました。
帯には「読書エッセイ」と書いてあるけど、エッセイというより評論に近い感じ。そしてタイトルとイラストの表紙から読者を選びそうだけど、普通に小説が好きな人なら興味を持てる話題ばかりなので、男女関わらずオススメ。
目次をコピペしておきましょうか。

本のなかは、逃げ場のない青空。――はじめに

月曜日 肺病で夭折した文學少女の霊に取憑かれてしまった人たちのために
 少年少女・家庭の医学――肺病で夭折した文學少女の霊に取憑かれてしまった人たちのための小川洋子入門
   日々の反復。 / なにかがあった。いまはない。 / ツッコミを入れない語り手。
   どこにもない場所。 / フィエットな小説世界。

 附録 あしながおじさんのいない娘たち。――倉橋由美子 『貝のなか』

火曜日 耽美と人形
 活字の國のピュグマリオン――少年王・澁澤龍彦、少女たちに簒奪される。
   人形愛の澁澤パラダイム。 / 純粋客体(オブジェ)少女への夢想――『人形塚』。
   美少年人形の逆襲――高橋たか子 『人形愛』。 / 展示される自動人形――長野まゆみの三日月少年。
   死体人形の購入者たち――笙野頼子 『硝子生命論』。 / 客体(オブジェ)化願望――小川洋子薬指の標本』。
   客体(オブジェ)化願望の大量消費時代。

水曜日 旅するお嬢さん
 牧師さま、あたしは惡い子ですの。――軽井沢は危険がいっぱい
   エロゲ的輕井沢。 / 高原で人生にはぐれる。 / 疎開地からテーマパークへ。
   ぜんぶ軽井沢がいけないの! / あるじなき軽井沢。

木曜日 「心は少女」の罠
 少年探偵団 is dead. 赤毛のアン is dead.
   エンタテインメント小説を読まない人もいる。 / 教養、その反抗と抑圧。
   「村」の世間としての読者共同体。 / ボ・ボ・「ボクら派」少年探偵団。
   定義・体系・連続性。 / 「本質」つまり〈面白さの中枢〉がわからない。
   「お文学」の中間小説誌的リアリズム。 / ホモソーシャルな読書共同体。
   女にも「ボクら派」はいる。 / ミステリに棄てられて。

金曜日 等身大と妄想のあいだ
 生活? そんなものはF1層に任せておけ。
   妄想の不戦敗。 / 引きこもるヒーローたち。 / 突発性ホームレス。
   遊民(ニート)の退屈。 / 壊れる無職。 / 自由業(フリー)という極道。
   部屋と私の儚い関係。 / 家事手伝いと花嫁修業。 / 三大「文學少女」小説。
   「私」の持っていきどころ――等身大と妄想のあいだ。

土曜日 心のにきび対策
 心のにきび対策――吉田健一の〈いい氣持〉
   子どもは人前であくびをする。 / 符牒は思考を阻む。 / 敵視と崇拝と。
   こんな私に誰がした。 / いい氣持。

日曜日 芥川賞選評を読む
 踊る銓衝委員会――芥川賞選評を読む。
   銓衝委員会のボヤキ。 / 銓衝委員会の生々しい記録。 / 作者か作家か。
   新人か苦節十年か。 / 文学とはサムシングのことである。 / べつの賞との兼合い。
   文壇の賞から社会の賞へ。 / あの人はなぜ落ちたか。

あとがき――文學少女の敵?

皮肉たっぷりなツッコミ満載で、多少イヤミに感じる部分もあれば、溜飲を下げる部分もありで、なかなか楽しめました。一番深く共感したのは、文庫本の解説についてかも。サラリと取り上げられてるだけなんですけどね? でもホント、ダメな解説ってあるよな〜。お前と作者の関係なんてっどうでもいいっつーの。書評なんてたくさんあるんだかあら、<解説>評みたいなのも誰かやってくれたらいいのに。