おれの中の殺し屋 (扶桑社ミステリー)(ジム・トンプスン/扶桑社ミステリー)

おれの中の殺し屋 (扶桑社ミステリー)
去年の一時期、扶桑社から出てるこの人のソフトカバーの作品にはまって何冊か読んだけど、読んだことない作品が文庫で新訳が出てたので買ってみる。前に訳された時は「内なる殺人者」というタイトルだったよう。ちなみに原題は「THE KILLER INSIDE ME」。「内なる〜」はサスペンスっぽくっていいタイトルな気がするけど、ジム・トンプスンの作品の雰囲気に合わせるとしたらやっぱ「おれの中の殺し屋」のほうがいいかもね。

テキサスの田舎町のしがない保安官助手、ルー・フォワード。愚か者をよそおう彼の中には、じつは危険な殺し屋がひそんでいた。長年抑えつけてきた殺人衝動が、ささいな事件をきっかけに目を覚ます。彼は自分の周囲に巧緻な罠を張めぐらせるが、事態はもつれ、からみあいながら、加速度的に転落していく……饒舌な語り口で、おそるべき人間の姿を描ききった、現代ノワールの金字塔!

この人の作品は登場人物が少ない。カタカナが苦手なので翻訳小説を読んでると誰が誰だかわからなくなるんだけど、トンプソンの小説は(舞台が田舎であることも関係あるかも)読みやすい。読みやすいうえにこのストーリーの疾走感!たまりません。
そしてまたこの作品はうまくできてるなぁ。物語の大半を事件のスリリングさとサスペンス的なドキドキ感ででひっぱっておきながら、ラスト近くになって読者を路頭に迷わせる。ページをめくる手が止まらない。それに加えて相変わらずのこの一人称の語り口が大好きだ。…といいつつ、今『ポップ1280』の解説を読んでいて、ラストのひとつ前の章だけ一人称でないということを知って、あわてて読み返してみたけど。まーとにもかくにも面白かった!未読の作品も早く読みたい。