ロマンス小説の七日間 (角川文庫)(三浦しをん/角川文庫)

ロマンス小説の七日間 (角川文庫)
ハーレクイン系小説の翻訳で生計を立てているあかりは、近所に住む恋人・神名が急に仕事を辞めたことで自分でも驚くほどショックを受ける。ついでに二人の行きつけである居酒屋の常連の女の子との浮気疑惑…。あかりは消化不良のもやもやを現在進行中の仕事(中世を舞台とした甘いロマンス)にぶつけ、原書とは全然違う方向に話をふくらませてしまうのだが―。
うわぁ、三浦しをんらしさ爆発です。デビュー作の「格闘するものに○」とか本書のような作品がわたし的に「三浦しをんらしい」と感じるのだけど、この路線が一番好き。作品によってがらっと印象変わるからな…。コメディタッチな部分も好きなのだが、とくにこの作品については、<恋人と正面切って話し合えばいいのに、そうできなくて自分のなかだけで妄想が先行してもやもやしてる>あたりがすごくよく書けてる恋愛小説だと思う。台風のなか二人でストーカー退治に出向いたり、あかりの父親(江戸っ子)に神名がご飯をつくってあげたりのエピソードも、前向きなラストもグッド。ますますこの作家が好きになった。それにしても神名…いきなり二階から飛び降りたり会社辞めたりするけど、お人好しで料理が上手くて、かなり好みです。