ラスト・ワルツ (角川文庫)(盛田隆二/角川文庫)

ラスト・ワルツ (角川文庫)
久しぶりの盛田隆二。帯には「『夜の果てまで』『サウダージ』に続く恋愛三部作の傑作!」とある。『サウダージ』を恋愛小説というジャンルに入れることにはあまり納得いかないな…まあいいけど。あとがきによるとこの作品は盛田隆二の処女作品でもあり、自分自身をモデルにした唯一の小説だそうだ。
1970年代、上京してきたばかりの若い男はある年上の女と出会った。恋愛とは呼べないつたなく短い時間をともにすごし、そして別れた。それから12年後、再び二人は出会う。人生から逃げ出したい女とそれを救いたいと願う男…。
で、これがすご〜く良かった。これまで読んだ盛田作品のなかでは一番好きかも。1ページ1ページから切なさがあふれてくる。客観的な事実がまったく出てこないところがいいんだよね。男の見たもの、感じたこと、思ったことしか読者も知ることはできない。もちろん男も、盛田隆二も。ほうっとため息をついてしまう小説だった。池上冬樹によるリキの入った解説もグッド。