今、何してる? (朝日文庫)(角田光代/朝日文庫)

今、何してる? (朝日文庫)
仕事の息抜き本としてちょうど良さそうなので買った。でも意外にぎっしりというか色々考えさせられるエッセイだった。主に恋愛と本について語ったエッセイ。恋愛の部分はけっこう共感することが多かった。本の部分に関しては読んだ本読んでない本色々あり、やっぱ読んだことある本に関する部分を興味深く読んだ。藤野千代『ルート225』を取り上げたエッセイより抜粋―

姉妹の事情とは無関係に毎日は昨日と同じく続いていき、そんな日々のなか彼らは元の世界へ戻ろうと試行錯誤を続ける。けれど戻れない。愕然とする。だって戻れないのだ。いくらがんばったって。しかし、戻れないからこそこの小説は私たちにひどく身近になる。卒業や引っ越しや失恋や喧嘩やそんなものによって、何かを、だれかを、唐突に失ってしまう私たちは、エリ子とまったくよく似ていて、それでもここにとどまり続ける。戻れないまますすむ現実のなか、日々を過ごしていくエリ子に、このちょっと風変わりな小説に、私は何か、大きく救われた気分を味わう。

あーなるほどね、そういえばそうだなぁなんて今さら思ってしまった。以前読んだ文庫本の解説でも思ったが、この人の藤野千代作品への指摘はなるほどと思わされるなぁ。