私が語りはじめた彼は(三浦しをん/新潮社)

私が語りはじめた彼は
浮気性で最終的には家族を捨てて他の女に走ったある大学教授。彼に関わらざるを得なかった人々を主人公にした連作短編集。
「彼」はあまり出てこない。「彼」の存在が引き起こした波紋の呪縛から逃れられない人々の物語である。こういう手法の小説ってけっこうあるなぁ。川上弘美『ニシノユキヒコの恋と冒険』や平安寿子『なんにもうまくいかないわ』(これは「彼女」だが)、ほかにも小池真理子とかの作品にもあったような…。
三浦しをんらしさがなりをひそめて、ただの上手い作品になってるかんじがする。これまで読んだ作品の中ではたぶん一番完成度が高くて上手いのだが、印象が薄いっていうか…。個人的にはこれまでのような個性的な作品が読みたいなぁ。