Book(30-31)
◆ランチタイム・ブルー (集英社文庫)(永井するみ/集英社文庫)
30歳を機に会社を辞め、インテリア・コーディネーターへ転職した千鶴。慣れない業界の中で奮闘する千鶴の成長と振りかかってくる様々なトラブルを描いた連作短編集。
この人の作品ってジャンル的にミステリなんだけど、だとすれば一番大事なそのミステリの部分が下手だ、と感じるときがままある。『俯いていたつもりはない』とかもそうだったんだよね。この本の中では下着ドロの事件が起こった「フィトンチッド」。オチがありえないくらいに弱い。その部分をのぞけばかなり上手いんだけどなー。ミステリ色の薄い作品のほうが断然いいっていうのも不思議な話だが…。二世帯住宅のインテリアについて起こったトラブルを描いた「ビルトイン」なんかはすごく良かったな。人間のずるさとか身勝手さとかを描くのがやっぱ上手いもの。ただこういう連作短編集なら軽やかさというかちょっと息抜きできるような部分があればいいな、とも思う。好みの問題かな。ま、わたしの中では期待の作家であることに変わりないです。。
◆NR(ノーリターン)(川島誠/角川書店)
派手な装丁が目を引いて気になっていたのだが、ためらっているうちにブックオフで発見したのでそちらで購入。この作家の長編を読むのは初めてだったもんで。
交通事故で記憶を失った主人公・高橋進。スペインからやって来た叔母に、中国マフィア、陸上のコーチ、変な手紙、いろんな人たちに急かされて、トラックを走ったりAV撮影を手伝ったり…。訳の分からない展開に身を任せて、どんどん物語は進むのだが―。
深刻さのかけらもない軽い語り口調に、めちゃめちゃな設定。物語自体がギャグのような…でもだったら一気に読ませるほどのスピード感が欲しかったなぁ。う〜む。