Book(28-29)

取り扱い注意 (角川文庫)
取り扱い注意 (角川文庫)佐藤正午/角川文庫)
平凡で地味な人生設計を描く主人公・英雄の唯一の特技は女にもてること。風来坊で刹那主義の叔父・酔助と再会することで彼の人生が変わり始める―。時間軸を巧みに操ったクライムノベル…の要素あり(クライムノベルであるとは言い切れない感じ)。
いやー面白かったなぁ。一年前の回想が随所に挿入されているかたちで、でも登場人物が少ないせいか読みやすいんだけれども、結末が(つまり一年前に何が起こったのか)全然予測できない複雑な構成。そんな巧みなストーリー構成に加えて、言葉のセンスもすごくいい。佐藤正午伊坂幸太郎って同じ作家(たぶん外国の)に影響を受けている気がするなぁ。誰だろう…。


夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))
夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))ロバート・A・ハインライン/ハヤカワ文庫)
国内のSFにすら疎いわたしにはわからないが、たぶんこの人はSF界で有名な作家なのだろう。知らないけど。紹介文に<巨匠>って書いてあるし。これも本屋のタイムトラベル特集の棚で見付けたもの。
自分の無知ぶりはさておき、面白かったです。何十年であろうと冷凍睡眠ができるという設定で、一人の発明者のトラブルが描かれた作品。詳しく書かれてないのでよく分からないけどコピーライトをみるかんじでは1957年にアメリカで発表された作品なのかな。冒頭の舞台設定は1970年。そして主人公が30年間の冷凍睡眠を経て目を覚ましたのが2000年なのだ。つまり設定を近未来にしたうえで、主人公をさらなる未来に飛ばしたわけですね。ストーリーそのものの面白さに加え、主人公の見る2000年の描写が、2005年にいる読者としては興味深い。やたら技術が進歩しているのである。主人公が開発した「ハイヤード・ガール」(掃除をやってくれるロボット)が70年代にすでに大ヒットしていたり、2000年ともなれば人間の命令に従う家庭内ロボットが普及していたり、雨に濡れても勝手に乾く服が一般的になっていたり。その一方、社長室で葉巻を勧められるシーンがあったりして(今のアメリカでそんなことしたら異星人を見るような目で見られるんじゃないだろうか)。思ったほど未来は希望にあふれてないってことでしょうか。まー21世紀になってもドラえもんは開発されてないし、ね。
ま、そんな部分も楽しみつつ、ストーリーにも堪能。主人公のダニイは技術者としての才能にあふれ、自らが設計した「ハイアード・ガール」のヒットにより会社を大きくする。しかし営業面を担当していたパートナーと意見が食い違い、手ひどいやり方で会社を追い出されてしまう。働く場所を奪われ自暴自棄になっていたところ「冷凍睡眠保険」の広告に目をとめ、そのまま手続きをしてしまう。一度冷静になってやはり止めようとするのだが、パートナー夫妻と揉めたあげく自分の意志ではなく冷凍睡眠させられてしまことに。そして目を覚ました2000年、彼は新しい技術を学びながらもかつての知り合いを懸命に捜すのだが―。
後半3分の1はドミノ倒しのようにいろんなことがひっくり返ってしまうドキドキのストーリー展開。面白かったー。ダニイの愛猫・ピートの活躍シーンも多いので猫好きな人にもオススメ。