Book(24-25)

Love Stories
Love Stories(水曜社)
恋愛小説アンソロジー。筆者は山田詠美鷺沢萌佐藤正午島田雅彦谷村志穂、川西蘭、川島誠角田光代。わたしはナゼか書き下ろしだと思いこんでいた。一編目の山田詠美「ぼくの味」を読んだときにちょっとヘンだな、初期っぽい作品だなとは思ったのだが。それもそのはず「ぼくはビート」の収録作品であった。一度読んだ作品であることに気付かなかったのはムナシイが。ま、それ以外は未読の作品であることを考えると、なかなか豪華なラインナップでしょう。佐藤正午谷村志穂、川西蘭、角田光代の作品が良かった。なかでも谷村志穂の作品「私にも猫が飼えるかしら」が突出してわたしの好み。この人の作品は『十四歳のエンゲージ』しか読んでないと思うから、他の作品も読んでみたい。川西蘭については佐藤正午の最新エッセイで触れられているを読んで、ぜひ読んでみたいと探し回ったのだが見付けられず、一編だけとはいえ読めて良かった。佐藤正午「イアリング」は一人暮らしの中年作家が視点となって描かれていて、エッセイの中に紛れ込んでても不思議ではない作品。それだけエッセイの完成度が高いという話ではありますが。
中身はバランスも良くレベルも高かったけど、タイトルと装丁はひねりなさ過ぎ。がんばれ水曜社!


桜宵
桜宵北森鴻講談社
<香菜里屋>シリーズ2作目。この人の作品もなかなか見付けづらいんだよなぁ。
少し前に読んだ「蛍坂」では、素敵な創作料理と美味しいビールを出してくれる居心地の良いビアバー<香菜里屋>の魅力にすっかり参ってしまったのだが、2作目ということで少し落ち着いて物語を味わうことができた。<魔法の舌>を持つマスター・工藤は、安楽椅子探偵でもある。「推測には過ぎませんが…」と客の持ち込む不思議な謎の答えを、おいしい料理とともに差し出してくれる。それにしても気になるのは工藤の過去である。何か複雑な過去を背負ってそうだということがほのめかされているのだが…。これから明かされていくのかなぁ。今回一番美味しそうだったのが、湯葉で巻いた中に土瓶蒸しの材料(松茸、鱧、三つ葉、くずきり)を入れた春巻き。ムース状にしたタレとともにどうぞ。はー、行きたい…。