Book(6-7)

散る。アウト
散る。アウト盛田隆二毎日新聞社
一介のサラリーマンであった耕平は先物取引に手を出してしまったことから多大な借金を抱え、夜逃げ同然でホームレスとなった。そこで怪しげな男から声をかけられ、偽装結婚のため偽のパスポートでモンゴルへ行くことになる。偽装結婚とはいえその相手である、少年のような若い娘・ダワに好感を持つ耕平。様々な手続きを済ませるかたわらダワに市場を案内してもらっていたところ、明らかに耕平を狙った暴走車が―。それはそこから始まる不穏な事件の始まりに過ぎなかった。この偽装結婚の裏にあるものは一体何なのか。考える間もなく耕平とダワはひたすら逃げ続けることとなるのだが―。
すべての気力を失ったホームレス時代から一転、アクションあり恋愛ありスリルたっぷりどころか命まで危ないモンゴルへの旅、そしてダワへの気持ちを引きずりつつ一つの決断を下すラスト。全体の構成がすごく上手い。ちょっと物語に振り回されすぎた感は否めないが、ラストはなかなか良かった。


あしたはうんと遠くへいこう
あしたはうんと遠くへいこう角田光代/マガジンハウス)
今日行った古本屋で購入。まったくこの人の作品は多くて毎月何冊も読んでるがそれでもまだまだ未読本があって征服できないのだが、好きな作家だからこそ、それがまた嬉しい。この人の作品を初めて読んだのは『空中庭園』がハードカバーで出たときで、上手いとは思いつつつ追いかけるには至らず、去年くらいから改めて読み始めてはまっちゃったからなぁ。
この作品の帯には<今度こそ幸せになりたい/ある女の子のせつない恋愛生活15年を描く/角田光代はじめての恋愛小説>とあって、刊行は2001年で角田光代のデビューが1991年だから初期の小説だ。
本作は栗原いずみという女の子を主人公にした短編集。一人の女の子の話だから短編集と呼ぶのはおかしいかもしれないけど、18歳から30歳くらいまでの恋愛をところどころ切り取ったかたち。この主人公の女の子がすごくいい。いや全然うらやましくなないんだけど。基本的に角田作品の女の子たちは男運悪いし。でも急にポーンっと飛べる勢いがいい。どうしようもない男に夢中になったり二股かけて浮かれたり自己嫌悪したり…それでもなかなか抜け出せないような生活から、いずみは飛ぶ。違う街に、もしくは海外に。その潔さが読んでる方としては(他人からしてみると)気持ちいい。でも環境を変えるのは一瞬。だからこそ角田光代が得意とする何かいらいらの募る<フツー>の生活が生きてくる。この緩急の差がたまらない。そしてラストのお父さんのエピソードもこの本の締めくくりには最高だった。