Book(15)

I'm sorry,mama.
I'm sorry,mama.桐野夏生集英社
桐野夏生、そろそろ出さないかなー、なんて思ってたところだったから見付けたときは嬉しかった。昨日は恩田陸、今日は桐野夏生…幸せだなあ。発売日に読むっていうのも、何だか嬉しい。買って損なしと信じられる作家ならなおのこと。
娼館と孤児院で育った大人びた少女が大人になり、悪行の限りを尽くして生きていた。そんな女の人生を本人と、そして関わった人間の視点から描かれた長編。
本文を抜粋した帯の文より。
<私は、女の顔をした悪魔を一人知っているのです。その女のしたことを考えるだけで、ぞっとします。彼女の本当の名前が何というのか、今現在、何という名前を名乗っているのかは知りませんけど、もちろん彼女はまだ生存していて、人を騙し続けています。そして、へいぜんと人を殺し続けています。>
女の過去が明らかになり、ラストは女にとっての衝撃の真実があかされる。
今回も十分に楽しませていただきました。それにしたも、主人公の女の最悪なこと!子供の頃にいじめた相手もしっかり覚えていて復讐するし、金持ちからは金を盗むし、ちょっとしたことでも自分にとって邪魔であれば殺しちゃうし。ついでに(とくに前半の)脇役たちの濃さも、主人公に負けない。孤児院では先生として接した園児(25歳年下)と結婚した女やら、妻が寝たきりとなったのを機に女装に目覚めた男とか。とくに一番はじめの章<愛の船に乗った子供たち>は異常性が際だっていて、短編として十分なほどにおもしろくて、「あれ?これって短編集なのかな」と思ったほど。目新しさはないけど、やっぱこの人の作品はいいな。
ちなみにブックデザインも素敵。シンプルだけど上手いと思う。今回はほとんど何もされてないけど、タイトルとか大きい見出しとかって英語の方が加工しやすくて良いんだよね…。