Book(13-14)

蛇行する川のほとり
◆蛇行する川のほとり恩田陸中央公論新社
ある夏、高校二年生の鞠子は舞台用の背景画を制作するため、美術部の先輩・香澄から自分の家で合宿をしようと誘われる。香澄はその親友・芳野とともに校内ナンバーワンの美しさを持つ少女であり、その二人とともに夏を過ごせることに鞠子は有頂天に。ところが見知らぬ男子校生・月彦から「香澄に近づかない方がいい」と忠告されたり、その男の友人である中性的な美少年・暁臣が急接近してきたり、鞠子は自分の知らないところで何かが起き始めていることに恐怖を抱き始める。「わたしたち、絵を仕上げなくちゃいけないわ」−そう言って鞠子を誘った香澄には何か狙いがあるのか?鞠子・香澄・芳野・月彦・暁臣のメンバーによる合宿は、それぞれの思惑をかかえながら始まってしまう。章ごとに語り手をを鞠子から芳野、そして鞠子の親友である真魚子へと変えながら描かれる「過去」の事件を解き明かすミステリー。
読み始めるとたちまちその世界に没頭してしまって、自分のまわりが色あせてしまう。たまにこういう作家に出会うと本読みとしてはすごく幸せになれる。小池真理子の初期の長編小説でもそんな感じを味わった。『棺の中の猫』とかあのあたり(そういえばこの本は最近違う出版社から再び文庫本となっていた)。おもしろくて興奮するっていうのとはちょっと違って、すうっと本の中の世界に吸い込まれてしまう感じ。読み終わってもちょっとふわふわしてる感じ。ただこれはすごーく個人の趣味によるものなんだろう。好き嫌いが別れるかもしれない。でも恩田陸の創り出す、現実からちょっと浮いたような世界が好きな人にとっては、今回もどんぴしゃりのストライクな作品であると断言できる。
それにしても発売日ということもあって現時点ではまだISBNからではイメージもタイトルも出ないよう…。と思って調べてみたら、知らなかったけどこの本はすでに出ていたものをまとめたものらしい。そうだったのか。まだ読んでなかったんだな…。最初に出ていたのは3冊に分かれて出版されてたみたいだから、やっぱ一冊で買える方が得かな。


黄昏の囁き (講談社文庫)
黄昏の囁き (講談社文庫)綾辻行人講談社文庫)
なんか綾辻講談社文庫を片っ端から読んでるな…。これは<囁き>シリーズ第3弾。読んだことがない人のために説明すると、このシリーズはシリーズといってもそれぞれの作品が完全に独立してます。登場人物も、もちろん事件も。
兄が急死したとの連絡を受け、帰郷した翔二。大病院を経営する父親の影響力によって事故死として捜査を打ち切られたのでは…と感じた翔二は、亡き兄の知人であった占部とともに事件の真相に迫る。それと共に、翔二自身に迫ってくる子供時代の断片的な恐ろしい記憶−。
ひとつ前の『暗闇の囁き』ではちょっとわかりやすいストーリー展開にがっかりしたけど、こちらはそれよりは良かった。しかしそこそこ楽しめたものの、なんとなく物足りない感じも。