Book(27)

◆倒錯の帰結 (講談社文庫)（折原一／講談社文庫）
ついに「倒錯」シリーズ完結。これがまたえらく面白いつくりになってる。まず「首吊り島」と「監禁者」というそれぞれ独立していながらはるか遠くで共鳴しあうような二つのミステリがあって、前から読めば「首吊り島」、ひっくりかえして後ろから読めば「監禁者」の物語が読める。どちらから読んでもいいのだが先にその2編を読むように薦められてて、最後は本の真ん中にそれらを結びつける最後の物語「袋とじ（倒錯の帰結）」が入ってるという凝り様。なんというか、読者を楽しませるってことにものすごく力を注いでるなあというかんじ。多数の目撃者のいるなかで起こった密室殺人事件の謎解き「首吊り島」も、熱狂的なファンに監禁されて作品を書かされるミステリ作家の物語「監禁者」もそれぞれすごく面白い。そしてたしかにシリーズの前の2作を読んでからのほうが楽しめるな。