Book(24)

俯いていたつもりはない
俯いていたつもりはない永井するみ/光文社)
この人の作品は読んだことはないのだが、今月の「本の雑誌」で北上次郎氏が取り上げていたのをふと思い出したので購入したもの。決してこの作品をほめていたわけではないが、<近いうちに傑作を書く>と評されてたので気になったもの。
うん、確かに。つまりこの作品はまだまだだけど、これから先傑作を生み出す可能性があるってことだ。
主人公の緋沙子は母親が開いたキッズスクール『ラウンドテイル』を現在取り仕切る立場にある。高級住宅街にあり少人数制で子供の自主性を重視するプレスクールとしてマスコミにも取り上げられたこともあるが、決して規模を拡大することもなく、平穏な日々が続いていた。ところが園児の一人・希央の母親が失踪し殺害されたことにより、『ラウンドテイル』の日常が壊される―。
北上氏は「これをミステリにする必要はあるのか」と提起してるが、逆に言えば、ミステリにするならば結末へ向かう構成と結末自体をもうちょっと練り直すべきだと思った。アンバランスすぎるのだ。前半から中盤終わりにかけるまでの緋沙子の視点から見た部分がすごくうまく書けてるだけに、ラストは何も消化してない展開になっている。ついでにいえば何か自意識過剰っぽいタイトルも嫌いだ。