Book(19)

雨にもまけず粗茶一服
雨にもまけず粗茶一服松村栄子/マガジンハウス)
この人の作品は読んだことなかったものの、評判がよいようなので買ってみる。
東京にある小さな茶道の家元に生まれ、それを継ぐための修行を子供のころから受けてきた長男・遊馬はついに18歳。ところがこの遊馬は親から進められた京都の大学の受験をすべてボイコットし、予備校のお金で免許を取り、髪を青に染めて家を出てしまう。しかしひょんなところから居所が父親にばれそうになり、京都へ向かう友達の車に便乗させてもらうのだが―。
設定はかなり特殊。茶道関係や古道具などの専門分野にも踏み込んでいく。でもこの小説の本当の中身は18歳という微妙な年齢でまだ気持ち的には大人になってないのに将来を決めなければならない…という状況に置かれてしまった男の子の素直なストーリーだと思う。それでいてこの物語を面白く読ませてるのはそれぞれのエピソードの旨さ。さまざまな人間関係がしっかりと描かれているからこそ、一人の男の子の青春物語がたっぷりと楽しめる。ただ奇抜な脇役たちをもっとコミカルに動かしても良かったかな…という気もする。ま、そこらへんを差し引いても、かなり面白い小説です。