Book(10-11)

やさしい訴え (文春文庫)
やさしい訴え (文春文庫)小川洋子/文春文庫)
夫との冷め切った生活から逃げるように一人で山間の別荘にやってきた「わたし」は、近くの小屋でチェンバロという楽器を作新田氏と彼の弟子・薫子と出会う。それぞれの過去を背負った3人は優しくそして残酷な時間をともにすごし、時に癒され時に傷ついて―。
外界から遮断されたようなゆったりとした時間の流れとチェンバロの優しい響きの中で、3人のそれぞれの苦しみ、新たな三角関係の痛みがリアルに伝わってくる。胸が痛くなる、それぞれの再生の物語。

月の裏側 (幻冬舎文庫)
月の裏側 (幻冬舎文庫)恩田陸幻冬舎文庫
九州のある小さな水郷都市で失踪事件が相次いだ。失踪するのはいずれも堀に面した家に住む老女で、じきに戻ってくるのだがその間の記憶をすべて失っている―。もと大学教授の協一郎、彼の友人である多聞、協一郎の娘・藍子、そして新聞記者の高安の四人が事件を調べ始めたが、驚愕の事実が存在することを認めざるを得なくなっていく。失踪から戻ってきた人間は"人間"ではない―?人間の進化を題材にしたSFホラー。
優れたストーリーテイラーにはジャンルなんてものは存在しないのだ。じわじわとテンポを変えながら迫ってくる恐ろしさにはまってしまいます。