追憶のかけら(貫井徳郎)

追憶のかけら
実はこの人の作品読むのははじめてだ。売れてるなあとは思ってたけど、毎回ひねりのないタイトルがあまり気に食わなかったのだ。ま、でもちょっと仕事から逃避したいがため分厚いミステリを、と買ったもの。タイトルのセンスは変わってないけど。
交通事故で妻を亡くし小さな娘とも会えない生活が続くしがない大学講師・松嶋のところへ、見知らぬ男性が戦後活躍した小説家の手記を持って現れる。その小説家が自殺に追い込まれるまでをつづった手記は松嶋にとって非常に興味深いもので「ぜひ公表したい」と頼み込むが、手記の持ち主は小説家の自殺の原因を調べて欲しいと条件を出してきた。気が乗らない松嶋だが、研究者として千載一遇のチャンスを逃すのも惜しく、調査を引き受ける。
幾重にも仕掛けられた罠、二転三転するストーリー展開で、テンポ良く読ませる。なかなかおもしろかった。でも松嶋に向けられた悪意の動機がちょっと弱いな、という気もする。あとラストの妻からの手紙はいらない。上手くまとめようとしすぎだ。