平成マシンガンズ(三並夏/河出書房新社)

平成マシンガンズ
史上最年少15歳での文芸賞受賞作…らしい。もうやめようよ年齢で話題性狙うのは…と思いつつ読み始め、読み終わった今ものすごくびっくりしてるんですけど、わたし。この人、本当に15歳!? …本気でうまいんですけど。
どこにでもいるようなひとりの女子中学生の、<自分以外の世界>との闘いがリアルに描かれる。そりゃリアルだよね同い年だし…とか言ってる場合じゃないよ。無意味に肥大した自意識のカタマリが制服着て歩いてるような年代の子の内面を、同じ年代の子が、27歳の私が読んでも胸がヒリヒリするようなリアルさで作品にしてしまうって、かなり凄いことなんじゃないかと思う。<自分>と<自分以外>があまりにも上手く噛み合ない、あのもどかしさや悔しさを、正面からぶつかって、力のわく物語にまで昇華させてしまってる。空気や水と同じくらい、他愛ないおしゃべりが必要だった。学校と家族しか居場所はないのに、どちらもいつでもたやすく地獄になった。そんな時代を思い出しましたよ。
そして選考委員も絶賛してる「死神」のエピソード。そこまででも十分驚いてたのに、このエピソードが出てきたあたりを読んだときは、のけぞりましたよ。その年齢にして立派な小説家の目を持っているに加え、なぜきみはテクニックまで持っているのだ〜!! とね。年齢詐称の疑惑まで頭をかすめたほどでしたわ。死神にもらったマシンガンを片手に、世界に立ち向かう少女…やっぱいいよこの小説。読後感もグッド。
オドロキが先に立ってしまったけど、読む価値大いにありな一作です。このオドロキは「十五歳の著者が書いた小説として素晴らしい」からではなく「こんな素晴らしい小説を書いた著者は十五歳」というオドロキですから。

GOSICK(5) ―ゴシック・ベルゼブブの頭蓋― (富士見ミステリー文庫)(桜庭一樹/富士見ミステリー文庫)

GOSICK(5) ―ゴシック・ベルゼブブの頭蓋― (富士見ミステリー文庫)
シリーズ最新刊です。
いつものように一弥は長い階段を登る。頭脳明晰かつ毒舌家かつフランス人形のような容姿を持った少女・ヴィクトリカに会うために。ところがいるはずの場所にヴィクトリカがいない……。ある人物の目的のために連れ去られたヴィクトリカを救うため、一弥が立ち上がる。
前作が短編集だったので、なんか話の流れを忘れかけていた。ヴィクトリアの母親にまつわる秘密が、ここでも事件の核となる。しかもすごい微妙なところで終わってるんだよね〜。また次の卷が出る頃にはやっぱ忘れてしまいそうだよ。
今回はあまりヴィクは活躍しません。一弥ががんばってます。くそ真面目なガキのくせに、キザな台詞を吐いちゃったりしてます。まだまだ、物語全体の前半部分ってかんじですね。これからどうなるんでしょうか。